
てきましたが、とりわけ食料供給については、世界全体として大きな戦争がなく、戦後復興としての増産が持続的に続けられてきた他に、国際的な協力が非常に強く進められ、その結果の1つとして『グリーン・レボリューション』が成功したことです。さらにもう1つは、途上国の社会変革をそのリポートは強調しています。 多くの国で、農地改革が行われ、さらに中国においては社会主義革命が行われたということ、こういった社会変動というものがそのリポートには入っていないわけですが、いろいろな形の社会改革が特にアジアの途上国を中心に行われ、それが増産を支える大きな条件として働いてきたことを注意しなければなりません。農地改革が行われて初めて小作農も生産意欲あふれる自作農となり、それで生産、増産が刺激され促進されたのです。これが非常に重要な条件だと思います。 それから50年がたちました。今、黒田教授からお話がございましたように、今後20年、30年の予測が、有名なブラウン博士によってなされています。そのブラウン博士の予測は、今までの経済成長率、人口増加率、食料需要が、将来にそのまま延長された場合に現在考えられている生産の潜在可能性からして、十分に需要を満たすことができるかどうかという、観点からまとめられています。 ブラウン博士の結論は大変に悲観的です。人口も増える、経済の成長率は今までの通り続くと、それに伴って食料の需要も増える、こうした条件の下では仮に、食料がこれまでと同じ増加率で増えたとしても、食料の不足という事態を招くということです。 問題はそういう予測がなされる場合に、具体的にどういう現象が起こってくるかということです。食料の生産が今後とも今までのように増える、いやそれ以上に増えるということが可能であるかどうかについては黒田教授がかなり疑問を出しておられます。私としては明確な答えはわかりません。 しかし仮に人口増加・需要増加に見合うような食料の供給増がなかった場合どうなるか。マルサスの人口論では食料が足りなければ人口増加はそれによって減るということになっています。しかしこれは食料の消費水準が著しく低かった頃のことで、今日では飢餓で人口の調整が行われるといった事態は俄には考えがたい。社会保障、医療サービスなどといった諸条件で人口動態の規制される余地がかなり大きい。そうなれば、食料価格が上がり、それによって「緑の革命」ほどのことはないかも知れませんが、それなりに増産は刺激される。しかしそのかわり、食料価格の騰貴によって生活水準はそれなりに下がる、ということになるのではないかと思います。 その過程で短期的な食料の生産の減少、つまり飢饉が仮に起こるとするならば、そこで国際的な規模の社会不安が起こらないとも限りません。これらの状況が、この予測のもとにおいて判断されるわけです。 ところで問題は、ブラウン氏による食料供給の将来予測の中で、彼が見落としてい
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